株式会社LIXIL
LIXIL Advanced Showroom

「期待を知り、その先へ。」──ホスピタリティの最前線で活躍する3人が語る、“笑顔を届ける仕事”の本質

LIXIL Advanced Showroomでは、第一線で活躍する約1,100名のコーディネーターを擁し、全国約80拠点で各人が「お客さまの笑顔のために」というミッションの下、プロフェッショナルとしての在り方を追求し続けています。

今回、「ホスピタリティ」や「接客」を通じた「期待を超える感動」の価値をテーマとし、戸板女子短期大学(東京都港区)を舞台に社員とゲスト2社の対談イベントを開催しました。社内からは、LIXIL Advanced Showroomで9代目スペシャルコーディネーター(※)を務める上野さんが登壇。ゲストには、ANA成田エアポートサービスで国際線コンシェルジュとして活躍する岡﨑さんをお迎えしました。モデレーターは、オリエンタルランドで人材開発に携わり、現在はNPO法人ブランディングポート代表理事を務める安藤さんです。

対談から見えてきたのは、業界は違っても共通する「相手を深く知ること」からすべてが始まるという、ホスピタリティのシンプルで本質的な視点でした。

(※)スペシャルコーディネーターとは:全国約80カ所のLIXILショールームに在籍する約1,100名のコーディネーターの中から、毎年選出されるトップレベルのロールモデルです。 お客さま一人ひとりに寄り添う誠実な対応に加え、総合メーカーとしての高度な専門知識、さらには周囲に良い影響を与えるコミュニケーション力や共感力を兼ね備えた人財が選ばれます。

「ホスピタリティ」は華やかさだけではない。現場で向き合う仕事のリアル

安藤

ホスピタリティというと華やかなイメージを持たれるかもしれませんが、実際には責任の重さや難しさもあります。まずは、お二人が仕事の中で「リアル」だと感じた出来事を教えてください。

岡﨑

仕事をしていて一番責任を感じるのは、飛行機の欠航や遅延などのイレギュラー対応です。お客さまには「海外に住む家族に会いに行く」「大事な商談がある」「体調を崩した家族のもとへ急ぎたい」など、それぞれ事情があります。だからこそ、定時運航の責任を強く感じます。

特に入社当初は、自分の説明だけではお客さまに納得していただけず、先輩に頼らなければ解決できないことも多く、「もっと成長しなければ」と感じる場面がたくさんありました。

安藤

中でも印象に残っている出来事はありますか。

岡﨑

一番印象に残っているのは、コンシェルジュとしてデビューした初日のことです。シカゴ行きの便が大幅に遅延し、お客さまが乗り継ぎ便に間に合わない状況になりました。

ご希望の条件に合う便がなかなか見つからず、一生懸命探していたところ、お客さまが「そんなに一生懸命やってくれるなら、僕も一緒に探すよ」と言ってくださったんです。

その時に、どんな状況でも誠実に向き合い続けることの大切さを学びました。

安藤

一人で抱え込まず、周りにも相談しながら経験を積み重ねてきたんですね。

岡﨑

はい。落ち込んだ時は、同期や先輩に「こういう時ならどう対応しますか」と何度も相談しました。先輩ごとに違う答えが返ってくるので、それが自分の知識になり、少しずつ対応の幅が広がっていきました。

安藤

ありがとうございます。では上野さんはいかがでしょうか。

上野

私たちの仕事は、まだ形になっていない住まいに、お客さまから大きなご決断をいただく仕事です。だからこそ責任も大きく、難しさを感じる部分でもあります。

以前、お菓子作りが趣味のお客さまから、「オーブンも食洗機も入れたいし、シンク下にはゴミ箱も収納したい」というご要望をいただきました。

そのままご要望を受けることは簡単です。でも、それでは収納がほとんどないキッチンになってしまいます。本当に10年、20年先まで快適に使い続けられるキッチンになるのか。そこまで想像し、潜在的な課題を深掘りすることこそが、私たちの役割だと思っています。

安藤

お客さまのご要望をかなえるだけではなく、その先の暮らしまで考える必要があるんですね。

上野

はい。まずはご要望をしっかり受け止めます。その上で、「鍋やフライパンはどこに収納しますか」「お菓子作りの道具は使いやすい場所に置けていますか」などのコミュニケーションを重ねていきます。対話を通して、お客さま自身も気づいていなかった「理想の使い勝手」を一緒に形にしていくんです。

まさに先ほどのお客さまの場合も、最初はキッチン本体だけのリフォームをご検討されていました。しかし対話を通して「理想の暮らし」を紐解く中で、食器棚や吊戸棚も含めた「キッチン空間全体」での見直しをご提案しました。お菓子作りの道具がストレスなく出し入れできるよう、手元まで自動で降りてくる吊戸棚を取り入れるなど、空間全体でご提案をしたところ、大変ご満足いただくことができました。お客さまの言葉の奥にある「本当の想い」を引き出し、空間としてご提案する。これこそが、ショールームコーディネーターとして最も大切にしていることです。

安藤

そうした提案力は、最初から身につくものではないですよね。

上野

最初は本当に難しかったです。でも、その分、小さな成功体験を積み重ねることを意識してきました。

成功体験ってすごく大事だと思っていて。できないことばかりに目が向く時ほど、「今の自分にできること」を一つずつ積み重ねるようにしていました。

例えば、「どんな時でも必ず“笑顔で”接客することは私にもできる」。そこから一つずつ積み重ねていくことで、少しずつ乗り越えてきました。

安藤

お二人のお話を聞いていて、「変えられないもの」と「変えられるもの」をしっかり見極めて業務に向き合っていらっしゃると感じました。

天候や飛行機の遅延、建物の構造など、自分では変えられないこともあります。でも、その中でお客さまへの向き合い方や提案の仕方など、自分にできることに全力を尽くしている。その姿勢こそが、お二人に共通するホスピタリティなのだと感じました。

「また次のお客さまに会いたい」──仕事を続ける理由は“楽しい”から

安藤

ここまでお二人のお話を伺っていると、責任も大きく、決して簡単な仕事ではないことが伝わってきました。それでも、お二人がこの仕事を続けている理由は何でしょうか。

岡﨑

やっぱり、一番は「楽しい」からですね。

安藤

「楽しい」という言葉が出ましたが、具体的にはどんな瞬間にそう感じますか。

岡﨑

以前、ベトナムへ出張されるお客さまを担当したことがありました。搭乗手続きの際、パスポートの残存有効期間の関係でビザの取得が必要だと分かり、お客さまはとてもお困りでした。そこで、お客さまと一緒にビザ取得の手続きを進め、翌日、無事にご出発いただくことができたんです。

それまでは別の航空会社をご利用されていたそうなのですが、この出来事をきっかけに、その後はANAを選んでくださるようになりました。毎月のようにご利用くださり、搭乗されるたびに、私の姿があるかを気にかけてくださるようになったのです。

「久しぶり!元気?」とお声がけいただいて少し雑談を交わしたり、「また、来るね!」と温かくお声がけくださったり。

そうして何度もお会いできることが本当に嬉しく、この仕事を続けていて良かったなと感じます。

安藤

もう完全に岡﨑さんのファンですね(笑)。

岡﨑

そう言っていただけると本当に励みになります。お客さまとの信頼関係が少しずつ積み重なっていくことが、この仕事の一番のやりがいです。

接客中の岡﨑さん

安藤

上野さんはいかがですか。

上野

私も、「この仕事が本当に楽しい」という強い気持ちがあります。特に印象に残っているのは、三世代同居のためのご自宅リフォームを担当した時のことです。

奥様がカラーコーディネーター、ご主人がアメリカ人のデザイナーのご夫婦で、山手の丘の上にある邸宅で90代のおばあ様からご夫妻、お子様までご家族みんなで暮らすためのご計画でした。

おふたりともプロとしてデザインや質感に強いこだわりをお持ちで、玄関のギャラリースペースやコンクリート塗りの壁、天井のルーバーなど、本当に洗練された空間構想をお持ちだったんです。私もそのこだわりに合わせ、本物の質感を持つLIXILイチ押しのキッチンと大容量の収納をご提案しました。

ただ、お客さまには「壁を取り払うと構造上どうしても抜けない柱が残ってしまい、目立ってしまう」という大きな悩みがありました。

安藤

構造上抜けない柱となると、隠すのはなかなか難しいですよね。

上野

そうなんです。でも、そこまでのお話やこだわりをお伺いする中で、「目立たなくするのではなく、これほどおしゃれな空間なら、いっそのこと柱もかっこいいアクセントにしてみてはどうか」と考えました。

制約を課題として捉えるのではなく、そのご家族らしさを表現する要素に転換してみようと。そこで、柱を黒っぽい石で囲んでスタイリッシュにしたり、あえて柱の数を増やしてアートやグリーンを飾れるようにするご提案をしたんです。

するとお客さまがどんどんワクワクしてくださり、「なんでそんなに私の好みがわかるの?」「どのハイブランドよりも私を理解してくれた」と大変感動してくださいました。「完成したら遊びに来てね」とお声がけいただき、本当に特別な出会いとなりました。

お客さまのこだわりや本当の想いをしっかり理解したからこそ、お客さま自身も想像していなかった提案で「期待を超える」ことができたのだと感じています。

安藤

まさに、お客さまの日常や暮らしに深く関わる接客だからこそ味わえる、ショールームコーディネーターというお仕事ならではの醍醐味ですね。

上野

はい。単に商品をご案内するのではなく、その方の暮らし方や価値観まで理解してご提案する。お客さまの本当の想いをしっかり汲み取れた時の喜びや、そうして心を通わせるプロセスそのものが、私にとって何よりの「楽しさ」であり、この仕事を続ける原動力になっています。

安藤

お二人とも、最後は「楽しい」という言葉に行き着いたのが印象的でした。

お客さまとの信頼関係を築いていく楽しさや、その人らしい暮らしや時間を一緒につくっていく喜び。それぞれ仕事の内容は違いますが、人と深く関わるからこそ感じられるやりがいがあるのだと感じました。

期待を超える前に、まず期待を知る──相手の本当の想いを引き出すために

安藤

最後のテーマです。私は前職で接客に携わっていた頃、「感動とは、お客さまの期待を超えた瞬間に生まれる」と教わりました。

では、お二人が考える「いい接客」「いいホスピタリティ」とは何でしょうか。

岡﨑

まずは、お客さまが何を期待されているのかを知ることです。その上で、その期待を超えることだと思います。そしてもう一つ大切にしているのが、誠実に対応することです。

それから、先輩に教わって今でもずっと意識していることがあります。

安藤

ぜひ教えてください。

岡﨑

「相手に気を遣わせないことも一流の接客だよ」と教えていただきました。

VIPラウンジでは、お客さまをお見送りするときに二度お辞儀をする場面があるのですが、あるお客さまが、そのたびに立ち上がってお辞儀を返してくださったんです。

その様子を見た先輩から、「お客さまに気を遣わせてしまっている。それなら、お辞儀は一度でいい。相手に気を遣わせないことも一流の接客だから」と教えていただきました。

それ以来、お客さまの立場で考えることをより意識するようになりました。

安藤

とても印象的なお話ですね。お客さまに気を遣わせないためには、普段からお客さまのことをよく見ているのでしょうか。

岡﨑

はい。例えば、お急ぎだと感じたお客さまには、できるだけ時間をかけずに対応します。旅行好きだと分かる方なら、その話題から会話が広がることもあります。

遅延や欠航などでご要望をいただく場合も、すべてをかなえられるとは限りません。だからこそ、「今、一番優先したいことは何ですか」と確認しながら、一緒に優先順位を整理していくことを大切にしています。

その上で、「私はこの方法が一番良いと思います」と提案し、お客さまに選んでいただくようにしています。

安藤

期待を超えるというより、その前に、まず相手が何を一番大切にしているのかを知ることが大事なんですね。では、上野さんはいかがでしょうか。

上野

私も一緒です。まずは、期待を超えるために、お客さまの期待がどこにあるのかを知ることを一番意識しています。

安藤

期待は、どのように見つけていくのでしょうか。

上野

もちろん、お話を伺うことも大切ですが、それだけではありません。

仕草や表情、話すスピード、カタログの見方など、お客さまの様子もよく見ています。そのお客さまが何を求めて来店されたのか、どんなことを期待しているのか。いろいろな情報を集めながら考えています。

接客中の上野さん

安藤

質問の仕方にも工夫があるそうですね。

上野

はい。LIXILショールームでは、「Yes・Noで答えられる質問ではなく、まずは大きな質問から始めよう」とよく言われます。

「今日はどんなことを期待して来てくださいましたか」

「どんな暮らしを実現したいですか」

そんなふうに、お客さまの想いを自由に話していただいて、そこから「なぜそう思われたんですか」と深掘りしていきます。そうすると、お客さま自身も気づいていなかった本当の想いにたどり着くことがあります。

ご要望をそのまま形にするのではなく、「なぜそうしたいのか」を一緒に考えることが、結果として期待を超える提案につながるのだと思います。

安藤

お二人のお話を伺っていて、ホスピタリティの本質に対する理解がより深まりました。

ホスピタリティとは一方通行のサービスではなく、人と人が双方向にエネルギーを与え合い、共につくりあげていくものなのですね。

良い接客、良いホスピタリティとは、深い観察や問いかけを通して、まず相手の本当の期待を捉えること。そして、それをいかに超えていけるか。相手をよく見て、よく聞いて、本当に大切にしていることを一緒に考える――その丁寧な積み重ねこそが、お客さまの想像を超える提案やサービスにつながり、互いにエネルギーを与え合う最高の関係を生むのだと、改めて実感しました。

そして、お二人に共通していたのは、「相手を笑顔にしたい」という想いと、その仕事を「楽しい」と心から感じていることでした。

ホスピタリティの仕事は、決して華やかな場面だけではありません。だからこそ、一人ひとりのお客さまと真摯に向き合い、信頼関係を築いていくことに、大きなやりがいがあるのだと感じます。

今日は、お二人の貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

岡﨑

ありがとうございました。

上野

ありがとうございました。