違う特性を持つ人たちが、共にはたらき、共に成長して実現する Your Smile,Our Smile(YOurS)の現在地 〜 障がい者雇用が描くダイバーシティ&インクルージョン
LIXIL Advanced Showroomでは、創立当初から多様な人財が活躍できる会社をめざしていましたが、2016年から、より具体的なアクションとして、ダイバーシティ&インクルージョンを実現するべく活動を行っています。
その中でも、障がい者雇用は、スローガンである“Your Smile, Our Smile”から「YOurS(ユアーズ)」と呼んでいます。そして、障がい者雇用によって採用されたメンバーをYOurSメンバーと呼んで活動を続けています。
YOurSメンバーは、今や30名以上が本部やショールームの各拠点ではたらいています。それぞれの個性や能力を活かした共生環境がどうやって築かれたのか、採用をはじめ、メンバーのサポートを担当する八重樫さんに語っていただきました。
共にはたらいている仲間から、「障がい者」と呼びたくない、という意見がでました
ダイバーシティ&インクルージョンを推進する中の大きな柱として、女性活躍、介護、障がい者雇用に注力していましたが、特に成長し、変化してきたのが、「YOurS」の活動です。
活動の初期は、企業の社会的義務として、法定雇用率を達成する目的もある中で、どのように進めるかが課題でした。まずは規模の大きなショールームを中心に、受け入れ体制を作っていただき、ショールームでできる仕事のニーズを探っていきました。また、受け入れるショールームにはサポートメンバーを置いてもらい、フォローもお願いしました。
人財は障がい者の支援センターに紹介をお願いし、当社の就労条件やSMILE Valuesに共感を示していただける方を探し、事前の実習も必須として、マッチングを重視しています。個々で特性が異なり、体調管理も必要なので、当社だけではなく、支援センターや保健師さんによる定期的な面談も行って、職場にうまく定着できるように支援しています。YOurSメンバーの多くは精神障害者保健福祉手帳を持っているため、より心身のケアが重要になってくるのです。こういった人たちが定着できていることも、「YOurS」の一つの大きな特徴です。
じつは、このメンバーの「YOurS」という呼称は、障がい者雇用を進めていく、まだ試行錯誤をしている段階で、現場のサポートメンバーの声がきっかけで生まれました。「障がい者」という名称で呼びたくない、という意見をもらい、本当にその通りだということで、自分たちの名前をつけよう、ということから発生したものです。
共にはたらくことの難しさを乗り越えた6年
「YOurS」の名称が決まった後も、障がい者雇用の推進は、すべてが手探りで試行錯誤の連続でした。
その最も大きな理由が、障がいを持ったメンバーと健常者の間で、垣根をつくらないことを大切にしたからです。そのため、ショールームや本部で共にはたらきながらサポートしてくれた皆さんとも、一緒に試行錯誤を続けることになりました。
障がい者とはたらくことが初めての人も多く、わからないことや戸惑いがたくさんありました。「普通に接するってどんなことだろう」と考えさせられることが、常に続いていくのです。例えば、歩くことが他の人よりも時間がかかる人に対して、歩きやすいようにケアをすることが良いのか、普通の人と同じように自分で頑張って歩いてもらった方が良いのか、どちらでしょうか?ついつい、歩きやすいようにケアをしたくなりますが、本人は少しくらい時間がかかっても頑張って歩きたい、と考えている場合もあります。人によって、またそのタイミングによって“普通”の行動が変わるのは、健康な人と同じなんです。
健康な人同士であれば無意識に判断していることに、「このメンバーはどうしたいだろう?」と考え、理解をしていくことは、なかなかない経験で、最初は難しさがありました。しかし、多様な人たちが一緒にはたらくには、こうした理解や共感が必要です。コミュニケーション面や最適なはたらき方、仕事内容など、ショールームでもその人の特性にあわせるための多くの試行錯誤をしてもらいながら、受け入れてもらっていったのです。時間をかけて互いの理解に努め、ハードルを少しずつ乗り越えてきた6年でした。
多くの仲間の理解と、メンバーの努力と成長で活躍の幅が広がる
YOurSのメンバーがどんな仕事をしているのかというと、活躍の分野は広範で、ショールームによっても異なります。
<主な仕事>
・館内の美観を保つこと
・カタログの補充、消毒や備品の整理整頓
・データ入力をはじめとするさまざまな事務業務
上記のような、基本的かつ大切な業務は、得意とする人が多く、私よりも細部にこだわり、精度が高い仕事をしてくれます。ほかにも、より具体的な場面をお伝えすると、例えばVRを使ったご提案では、YOurSが煩雑なデータ入力をしてくれるようになったおかげで、活用率がナンバーワンになったというショールームがありました。また、在宅でオンラインショールームの予約の采配などに携わるメンバーもいます。そして会社に大きなインパクトを与えたのが、IT分野の業務です。AIを使った自動化プログラムを組んでのメール発信や、業績管理、業務の見える化などでは、経営陣からも高い評価を得て、「こういう人をもっと採用しては」というお話をいただいたほどです。
はたらき方は大きく分けて、ショールーム、あるいはオンラインで、お客さまの近くではたらくか、本部に所属して社内のメンバーとはたらくかの2つになります。オンラインやリアルショールームなど、はたらくスタイルを柔軟に選択できることで、多様な人が活躍しやすくなっているのが、私たちの特徴といえます。
こうしてメンバーの幅広い活躍が認められていく過程で、一般的には難しいとされていた、障がいを持った「新卒の採用」も行うことになりました。なぜ新卒採用が難しいかというと、障がいを持った人を一から育てるのには、時間が必要だからです。しかし私たちはそこに取り組み、専門的なスキルを持っていても、社会に出る機会を与えられない可能性があった人財を、新卒でも採用するようになりました。
こうして、採用の枠を広げ、メンバーたちがどんどん仕事の幅を広げていく一方で、変化が早い今の時代では、やっていた業務がなくなることもあります。しかし、周りの人たちがYOurSそれぞれの特性理解に努めてくれたおかげで、「これができるんじゃないか」「やってみてもらおう」と、新しい仕事に次々とチャレンジできる環境ができてきました。ここで大切なのは、できるかどうかではなく、まずはやってみようとお互いが前向きになり、取り組んでいる点です。そして取り組む中で課題があれば改善し、やりやすい方法を考え、一緒に最適の方法を探る、共にはたらく形ができあがってきていると感じます。そのおかげで、YOurSのスキルアップにもつながり、仕事の幅がさらに広がりました。会社ではこの先も新たな取り組みや施策が生まれていきますが、この環境があれば、YOurSメンバーたちもその都度新しい仕事を見つけ、活躍し、私たちのミッションである「お客さまの笑顔のために」実現の一助になることができると思います。
6年間で感じるYOurSメンバーの成長
採用スタートからここまで、YOurSの活躍ぶりはマネージャークラスの人たちの口コミや、社内SNSの発信などで知られるようになりました。採用当初は苦労して仕事を探しましたが、今では「そんな人がいるなら採用したい」「こんな能力を持った人は採用できませんか?」と、むしろショールームから人財のご依頼をいただくほどです。それもこれも、周りの理解や協力を得ながら、メンバー自身が努力し、その力を認めてもらえたからにほかなりません。
本当にメンバーたちの成長は著しく、5年も経つとまったく別人のようです。例えば入社時は人を前にすると全く言葉が出てこず、固まっていたメンバーがいました。しかし一方で、館内の美化に関しては誰よりも積極的でした。そんなメンバーが、仕事に慣れるにつれて自信がついてきたのか、今ではお客さまにお声をかけていただいた際に、話をひろってコーディネーターにつなぐことができるまでに成長しました。ほかにも、支援センターでは「この人にこの仕事は難しいと思います」と言われたことでも、チャレンジしてみてもらうと、普通にこなせるようになったり…と、成長エピソードは数え切れません。みんなできることが一つ増えていくたびに、すごくいい笑顔を見せてくれますが、それが何よりもうれしい瞬間ですね。
みんなそれぞれに特性はありますが、自分なりにできることを考え、頑張り続けることで、できることを増やして自信を持ち、強みにできています。「みんながはたらく中で得られたものを活かすことができれば、社会で十分活躍できる」、私は6年でそんな実感を得るようになりました。YOurSもほかの人と変わらず、スキルアップやキャリアアップをしたいと考え、そして確実に進化を遂げています。それをもっと叶えられる体制を作っていけるよう、これからもサポートをしたいと思っています。
共にはたらき、共に成長することで、社会をよりよくすることができる
取り組みをはじめた頃は、私自身、どこまで会社の中で、ダイバーシティ&インクルージョンを実現できるのだろう、と思うことがありました。
しかし、今、障がい者雇用を考え、促進する幾つかの団体や企業からお声がけいただき、障がい者雇用について、講演をさせていただくまでになりました。また、YOurS メンバー自体が、自分が仕事を通して成長してきた体験談をお話する機会も増えています。こうした場に立たせていただいている理由は、私たちが垣根をつくらずに、「共にはたらく」ことを実現できているからです。障がいを持ったメンバーが一般社員と共にはたらくということは、言葉では簡単ですが、やはり大変なことだと思います。それでも、お互いに試行錯誤を続けて問題を乗りこえ、多くのショールームで、YOurSメンバーに「居続けてほしい」「いなくなったら困る」という言葉をいただけるようになっていることを、外部からも評価していただいているのです。
全社員にも改めて知ってもらいたいのですが、障がいを持ったメンバーに壁をつくらず、共生関係を実現できていることは、LIXIL Advanced Showroomの素晴らしさであり、LIXILショールームの素晴らしさです。私たちの取り組み、“Your Smile, Our Smile”のスローガンは、共にはたらき、成長することで、多様性を実践し、乗りこえ、新しい価値を出しつつあるんだと感じています。一つひとつ築き上げてきた私たちの取り組みが、会社という枠組みを超え、社会に良い影響を与えていることに、自信を持っていただきたいです。
そして、関わっていただいているみなさんに、改めて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
本当に、無理だと思ったことが何度もありました。
でも、今、私たちは、共にはたらくことを実現しています。