株式会社LIXIL
LIXIL Advanced Showroom

男女問わずライフキャリアの悩みをオンラインで相談できる窓口「ハナセルフ」を利用してみませんか? 〜一般社団法人ライフキャリア妊活サポート・モリーブ代表・永森咲希さんに聞く〜[笑顔ではたらこうVol.3]

LIXIL Advanced Showroom(以下LAS)では “健康経営”に取り組むため、2023年から健康推進部を開設し、社内への健康に関する情報発信、推進施策、常駐保健師による健康相談を実施しています。
取組みの一環として、オンライン相談室「ハナセルフ」を導入しました。一体どんな窓口なのか、こちらの相談室を運営している一般社団法人ライフキャリア妊活サポート・モリーブ(以下:モリーブ)の代表・永森咲希さんにお話を伺いつつ、LAS社内での取り組みについても今一度紹介します。

「ハナセルフ」はオンラインで男女関係なく誰からでも相談が可能

─まず、ハナセルフはどんな窓口で、どういった機能がありますか?

永森 オンライン相談室『ハナセルフ』は、妊活や不妊をはじめ、それらに関連したさまざまなご相談について、カウンセラーがオンラインでお伺いするサービスです。妊活、不妊治療をするかどうかの悩み、また治療中の不安やつらさなど、専門知識のあるカウンセラーがお話をお伺いします。「子どもを持つ・持たない・持てない」といった悩みは、夫婦・親との関係や、友人・職場の人間関係、また仕事と治療の両立のストレスや個々のアイデンティティー、キャリアへの影響等々多岐にわたりますが、私たちは、そうした幅広い心理的な相談をお受けしています。医学的な相談はお受けできませんが、女性特有の、月経やPMS、更年期に関係するメンタルヘルスについても、対応しています。

ハナセルフは1回50分、オンラインでカウンセリングを行います。ご予約の際に、相談内容を項目として選び、簡単に状況をお書きいただきます。こちらはお書きいただける範囲で結構です。カウンセラーが丁寧にお話をお伺いし、ご相談者様の戸惑いや不安、どのような状況にいらっしゃるのかを一緒に確認させていただきます。そして混乱を一緒に整理させていただきます。一度で相談を終える方もいらっしゃれば、定期的にメンテナンスの意味合いで受けられる方もいらっしゃいますね。ご自身が納得できる方向に向かえるまで継続的にカウンセリングを重ねる方もいらっしゃいます。女性に限らず男性の方、またカップルで相談される方もいらっしゃいます。不妊の原因の約半分は男性に問題があり、男性でも悩んでいる方は少なくありませんから。

カウンセリングは、思考を整理するための作業

─カウンセリングというと、どのようなことを行うのでしょうか?

永森 日本にはカウンセリングを受ける文化があまりないので、身構えてしまわれたり、敷居が高く感じられたりするかもしれませんね。ですが、カウンセラーはご相談者様に対して、指摘したり、否定したり、指導したりする存在ではありません。その時最も気になることやモヤモヤすることをお聞かせいただきながら、どう考えたらいいのか、どんな方向に向かって行ったらいいのか、共に考えていく、伴走者と思っていただけたらよいかなと思います。50分間というその時間は、ご相談者様のためだけの時間であり、カウンセラーは絶対的な味方です。

人は「胸が痛い」とか「心が揺れる」という表現をしますよね。心というのは、つまり脳です。心が感じることは、脳が感じているということでもあります。人それぞれ性格が違うように、思考傾向も違います。自分だけで考えていると、同じ考えがぐるぐると頭の中で回り続けているように感じること、皆さんご経験があるのではないでしょうか。この「ハナセルフ」では、カウンセラーとの会話を通して、ご自身の混乱を言語化し、整理し、その道筋を立てていくプロセスを踏みます。ひとりストレスを抱えている状況は、ダムに水がいっぱい溜まっている状態。ゲートを開け、少しずつ水を流していくようなイメージとお伝えするとわかりやすいでしょうか。

─混乱や迷い、言語化できない感情など複雑に絡まった感情の糸を解くお手伝いをしてくださるということですね。

永森 はい、おっしゃるとおりです。自分の問題を俯瞰的に見て、ロジカルに整理してみるテクニック、なかなか身につけるのは難しいですが、身につけてみようという意識を持つことは大事かもしれませんね。人は感情に流されやすい生きものですから。同じ思いを抱える人同士でおしゃべりするのもいいですし、最近はAIと対話するという人もいます。カウンセラーへの相談も、さまざまなツールのひとつ。悩んでいる時は、どうしても自己を認める力が弱ります。どんな感情でも胸のうちを素直に吐き出していいんだと思える場所を持つことが、今のストレスフルな皆さんには必要なことではないでしょうか。そのひとつが「ハナセルフ」だと思っていただければ嬉しいです。

自分自身の経験から、行き場のない感情の受け皿を作る

─寄り添ってくれる場所があると知るだけでも、安心材料になりそうです。永森さんはなぜモリーブを設立されたのでしょうか。

永森 それは私自身が、長きに亘る不妊治療経験者で、不妊治療の正しい知識を持たずに苦労したからなんです。

多くの方が、不妊治療というものを受け始めてからはじめて、その挑戦の大変さと難しさを痛感します。そしてさまざまな悩みに見舞われ、葛藤します。
私もそうでした。知識がないままにスタートし、何年も不妊治療を受けて一度は妊娠したものの4か月目で流産し、その後はとうとう子どもを授かることはありませんでした。

不妊治療では具体的にどんなことを経験し、何が大変で、いつまで続けるものなのか、またうまくいかなかったときどうすればいいのか、そういったことを教えてくれる人はいませんでしたし、極めて個人的なことゆえ、当時は気軽に相談できる場所もなかったんですね。どこでどう区切りをつけるべきか含めて、プランなくやみくもに6年間治療を続け、仕事も辞めることになりましたし、多額の費用もかかりました。いろいろなことに理不尽さを感じましたし、やり場のない怒りのような思いに苛まれましたね。

やりきれない想いをどうおさめたらいいのか、なぜ自分は生まれてきたのか、自分が経験したことを反芻することでそれがわかるかもしれないと、自分の体験を書き綴ったのですが、それが「三色のキャラメル – 不妊と向き合ったからこそわかったこと -」という本として出版されることになりました。たったひとりでも「自分も同じ」と共感してくださる方がいたらそれで充分だという思いで。私と同じようにやり場のない想いに翻弄されている人は少なくないはず、そんな子どもを願う想いや、願ったけれど叶わなかった想いの「受け皿」を準備したいと思ったんです。それがモリーブを立ち上げたきっかけです。ご自身を大切にしながら、誇りを持って生きていってもらいたい、そんな願いを込めて活動しています。

悩みの元を探り、ほどく糸口を見つけた2つの事例

─カウンセリングを利用したことのない人は、どのようなものか具体的なイメージがわかないと思います。利用者がイメージしやすい事例があればおしえてください。

永森 おひとりおひとり相談内容は異なりさまざまなご相談がありますが、今日は2つのご相談事例について、お話しできる範囲でご紹介しますね。
1つ目は、妊活がつらく、苦しくて、どうしたらこの苦しみから逃れられるのか、といったご相談です。
その方は、時間さえあればSNSで不妊治療が上手くいっている人の情報を探しまくっていたんですね。不妊治療が長くなると失敗体験を重ねることになり、ただでさえ自己肯定力が乏しくなるところ、他者との比較でますます自分を追い詰める状況にありました。そこでデジタルデトックスを意識し、SNS検索の代わりに何かできることはないか一緒に考え、それを実行してみることになったんです。すると、次第に心理的に落ち着きを取り戻し、仕事にも集中できるようになり、ネットから離れた時間を有効に使ってある資格も取得されました。この方はお子さんはできませんでしたが、今はその資格を活かしていきいきと活躍されています。

2つ目は、男性の上司に不妊治療をしていることを言えず、そのせいで信頼関係が崩れ、退職を決意されて相談に来られた方のケースです。
不妊治療をしているとなぜ上司に言えないのか、思考を整理していきました。

他の人に迷惑をかける。
子どもができないのは女性として劣っている。
子どもを育てないと一人前ではない。

そういったネガティブな固定観念に支配されていることがわかりました。
嘘をついたまま会社を辞めれば、この相談者様にとって命を求めること=悪いことになってしまうのと同時に、大きな傷にもなります。
ですから何度かカウンセリングを重ね、最終的には、自分が命を求めて頑張った行動は悪いことではないという考えに至り、真実を伝えて辞めるというところにたどり着くことができたんですね。どんな風に上司に話せばいいのかについても一緒に考えていきました。そして上司に正直に話したところ、なぜもっと早く話してくれなかったのか、よく頑張ってきたなと労ってくれたそうです。というのも、この上司自身がかつて不妊治療の経験者で理解が深かったこともあり、これからは遠慮なく相談してほしいと最終的には崩れかけた信頼関係が回復したケースです。

─思考を整理するカウンセラーの役割がわかりやすい例ですね。

永森 やはり、相談しづらいことを自分一人であれこれ考えても本質が見えなかったり、方向性が決まらないということが往々にしてあります。鳥の目をもって一緒にご相談者様を観察することは大事ですね。

女性の多様な人生に沿った、多様なサポートを共に探っていく

─LASとどのような目線で連携されているのでしょうか?

永森 女性の生き方は多様です。独身の方、子育て中の方、不妊治療中の方、シングルマザーや、お子さんを授かれなかったり、亡くされる方もいらっしゃいます。
今の時代、女性の人生が多様だからこそ、そのサポートも多様でなければならないと思います。そういった点で健康推進部の方々との想いは一致しています。

まずは「ハナセルフ」を選択肢の一つと考えていただき、気軽に利用して頂くことが第一歩かと思います。皆さん、マッサージやジム、ヨガなど、ご自身のケアやメンテナンスのためにいろいろ利用されてらっしゃると思いますが、この「ハナセルフ」も、そのひとつとしてご利用いただきたいです。最後に今一度お伝えしますが、私共は守秘義務を厳守していますので、ご相談内容を勝手に健康推進部の方にお話しするようなことは決してありません。ですので安心してお話しいただければと思います。
皆さんに安心して「話せる」安全な場をご提供し、笑顔を忘れずご自身を大事にしていただけるよう全力を尽くしてまいります。

<プロフィール>
永森咲希
6年間の不妊治療を経験し、仕事と治療の両立の難しさから離職するも、最終的には不妊治療をやめて子どもをあきらめた経験を持つ。その後、現在の一般社団法人ライフキャリア妊活サポート・モリーブを設立。
令和3年厚生労働省主催「不妊治療を受けやすい休暇制度等導入支援セミナー」の講師。現在、不妊治療専門医療機関にてカウンセリング及び倫理委員を務める。「オフィス永森」の代表。

著書:「三色のキャラメル‐不妊と向き合ったからこそわかったこと」文芸社)